ぼっちざろっくRe:Reの予約をしようとしたところ、映画館で予告を見て気になっていた『きみの色』が昨日公開していたことを知ったので、ついでに観てきました。
あらすじ
長崎県にある全寮制?ミッション系女子高に通う主人公のトツ子、トツ子と同じ学校に通っていたきみちゃん、そしてたまたま出会った音楽好き青年のルイくんの3人がバンドを組む話。以下、ネタバレありの感想を書きます。
感想
まず良かった点から挙げていきます。
映像がキレイ
全体的に画面が白っぽく、淡い色で構成されています。舞台が長崎県ということもあり、路面電車がある街並みや広大な海の描写など、旅情的なノスタルジーをそそられます。
音楽がキャッチー
この映画を観ようと思った最大の理由と言ってもいいのが、CMでも流れていたキャッチーな音楽です。「水金地火木土天アーメン」、歌詞もメロディも最高に中毒性があるし、どんな状況でこんな歌詞が紡がれるのかに興味が湧きました。
実際に劇中でも何度か流れますがやはり良かったです。あとテルミンとかいう楽器、音色が面白いけど見てて弾き方が1mmも分からなかった。
主人公の性格
トツ子は見た目通り、常におだやかで能天気で安心して見てられます。
ここからダメだと思った点を挙げます。
ストーリー展開が平坦
全体的にストーリー展開が平坦で、わくわくしたり続きが気になったりする気持ちが起きませんでした。話の流れを起承転結で表すと、「転」に至らない些細な「承」がひたすら続く感覚です。具体的に言うと、きみちゃんが祖母に黙って学校をやめたこととか、ルイくんが医者になるように親からの期待を受けている一方で音楽をやりたいこととか、ここが「転」なんだろうなと思う箇所はいくつかありました。ただ、これらも別に深刻な問題というわけでもなく、特に大きな軋轢を生むことなく解消されていきます。
また、この映画には基本的に全き「他者」が出てきません。主人公サイドと相容れない考えを持っていたり、対立したり、悪意を持っている人間は一人もいません。不快な刺激を受けることのないゆりかご、安定した「内部」でしか話は進行しません。
登場人物の深掘りが浅い
そもそもきみちゃんがなんで学校をやめたのか、劇中で明示されていなかった気がします。主人公のトツ子は性格のこともあって、きみちゃんの問題には深入りしないと宣言します。謎の理由で学校をやめ、謎の理由でギターを始め、唐突にバンドに誘われて参加する。もっと深掘りしてほしい、せめて背景だけでも説明してほしいところですが、なんの説明もなくストーリーは進行していきます。深掘りされないから共感も同情も反発もできず、いまいちストーリーに入り込めませんでした。
ルイくんはルイくんで、医者になるためにあっさりと離島を出る決意をします。彼の胸には音楽と家業どっちを取るかの葛藤があったはずですが、その描写も全くありません。
意味があるのか分からない設定
全寮制のミッションスクールが舞台ですが、いまいちこの設定が効いてる気がしません。バンドなんて低俗だから聖歌をやりなさい!みたいな頑強なシスターが現れるのかと思ったら、主人公に一番近いシスターは過去にバンド経験があり、理解があります。他のおばあちゃんシスターたちもライブで音楽を聴いて踊り狂う始末です。一応「ニーバーの祈り」という祈りと登場人物の意思決定を重ねた箇所がありますが、設定と関係してくるのはそのくらいです。
また、一番問題に感じたのはトツ子の「人の色が見える」という設定です。きみちゃんとルイくんの色が綺麗で、それに惹かれて歌を作ったのは分かりました。ただ、本当にそれだけです。例えば、他の人物が落ち込んでいる時に色のくすみで気づいたりとか、そうした物語の展開に絡むような特徴を見せてくれれば良いのですが、本当にただ見えるだけなのです。絵面が綺麗なのは良いのですが、タイトルにするくらいならもっと設定を生かしてほしいと思いました。
まとめ
別に悪い映画だったとか時間の無駄だったとかは思いませんが、特に心を動かされる場面はありませんでした。特に深く考えずに見る分には画面は綺麗だし、音楽も良いし、登場人物にも不快な人間は出てこないので良い映画だと思います。
それでは~